大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和24(れ)2359 判決

主 文

本件各上告を棄却する。

理 由

弁護人江村高行同田中一郎、同河合信義の上告趣意

第一点について。

記録によれば、原審第四回公判において、所論のように判事に更迭があり、公判

手続の更新が行われたのであるが、同公判調書には論旨摘録の通り、訴訟関係者が

いずれも第一回公判調書記載と同趣旨の弁論をなしたものの如く記載せられている

ことが認められる。しかし、原審第二回公判期日は共に何等の実体的弁論もなく延

期されているのであつて、第三回公判期日においてはじめて人定尋問、検事の公訴

事実の陳述及び被告人の尋問等が行われたものであることが記録上明白なのである。

されば所論第四回公判調書の更新に関する記載中「第二回公判調書記載と同趣旨…

…」とあるのは、すべて「第三回公判調書記載と同趣旨:::」の誤記に過ぎない

ものであると認められるのである。従つて原審公判手続には所論のような違法はな

く論旨は理由なきものである。

同第二点について。

旧刑訴三六〇条一項は「有罪ノ言渡ヲ為スニハ罪ト為ルヘキ事実及証拠ニヨリ之

ヲ認メタル理由ヲ説明」することを規定しているに過ぎない。夫故、有罪判決にお

ける証拠説明としては罪となるべき事実が如何なる証拠により認定せられたかを明

確にするため具体的にその証拠を特定しその内容を説示するを以て足るのであつて、

この要請を充すものである以上、事実認定の資料たる証拠を一括して挙示すること

を防ぐべき何等の理由もなく、必ずしも所論のように認定した個々の事実につき各

別にその証拠を摘示してその関連を一々明らかにする必要はないのである。この事

は併合罪の関係にある各個の罪を構成する事実についてもその理を異にすべきもの

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ではない。今原判決の証拠説明をみるに、原判決は併合罪の関係にある各個の犯罪

事実を各別に認定判示しながら、その認定資料である証拠はこれを一括挙示してい

ることは所論の通りであるが、各証拠につき具体的にこれを特定し且その内容を明

らかにしているのであるから、これを目して違法ということはできない。原判決に

は所論のような違法はなく、論旨は理由なきものである。

同第三点について。

盗罪においては、被害物件の価格そのものは、罪となるべき事実を構成するもの

ではないから、必ずしも判決においてこれを認定する必要はなく、またこれを認定

したとしてもその証拠理由を判示する必要はないのである。従つて、また判示被害

物件の価格が判示証拠のそれと精密に符合しないような点があるとしても、その一

事を捉えて直にその判決を違法であると断ずることはできないのである。のみなら

ず本件においては、所論被害物件の価格に関する原判決の認定は、その証拠と精密

に符合しないというだけであつて結局原判決挙示の証拠に照らしこれを肯認するに

足るものといわざるを得ない。(論旨は判示第二の被害物件について原判決援用の

A作成の強盗被害届(記録第一冊一五五丁)には「一万九千四百三十四円位とある

に拘わらず之を五千円位と判示している」と主張するのであるが、右被害届記載の

各被害物件の価格を合算すれば五千三百円となるのであつて、これによつて判示価

格を認定することは何等経験則に違反するものではない。所論は恐らく右被害物件

の価格と強取せられた現金との合算額一万九千四百三十四円を被害物件のみの価格

と誤解したことに基ずくものと認められる)。論旨は畢竟事実審である原審の裁量

権に属する事実の認定を非難するに帰着し上告適法の理由とならない。

同第四点について。

しかし所論原審認定の事実は原判決挙示の証拠に照らしこれを肯認するに難くな

いのである。所論は事実審である原審の裁量権に属する証拠の取捨又は事実の認定

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を非難するに帰着し上告適法の理由とならない。

よつて旧刑訴四四六条に従い主文の通り判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

検察官 安平政吉関与

昭和二五年一月二六日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 岩 松 三 郎

裁判官 沢 田 竹 治 郎

裁判官 真 野 毅

裁判官 斎 藤 悠 輔

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